バツゲーム
「ねえ雪城サン!?」
「何、美墨さん?」
どこかギコチナイ口調で、『美墨なぎさ』と『雪城ほのか』が会話を交わす。
そんな初々しい二人がいる場所、それはベローネ学院女子中等部二年桜ぐ……じゃなくって、三年桜組。
出会ったばかりならイザ知らず、今やもう「なぎさ♪」「ほのか♪」ってな具合な二人なのに、
今日は一体どうしちゃったの?
モチロンそんな非常事態に
―――苗字で呼び合ってる…
―――喧嘩でもしたのかしら?
―――なら私にもチャンスあるかも!?
クラスメイトは当然、学校中がザワザワザワワ…
だけどソレはヤッパリ喧嘩なんかじゃなくって―――
「ヤッター!ワンピン差で私たちの勝ち!!雪城さんとなぎさ、罰ゲーム決定!」
「名前で呼び合うの、絶対絶対絶対禁止だよ!?」
―――原因は昨日のボーリング対決の罰ゲーム。
だから今日の二人は『雪城さん』と『美墨さん』と言うワケ。
でも、こんなささやかな罰だけど、今の二人には意外と苦痛で…
「ほ…雪城さん、屋上でも行こうよ!?」
「いいよ、な…美墨サン!?」
「あの…美墨さん」
「えーと雪城サン…」
「美墨……」
「雪城……」
ゆきしろ―――?
みすみ―――?
段々ワケが分からなくなってきて、終業のベルが鳴る頃にはもうグッタリ。
そんな二人に志穂と莉奈が仲良く、そしてチョット意地悪く
「じゃあ帰ろうか?り・な!」
「いいよ、し・ほ!」
見せ付けるように名前で呼び合って
「ちょっと寄りたいトコあるから、二人も付き合ってネ!」
「いいよね!?なぎさ、雪城さん!」
ウシシと笑って小悪魔な提案。
『雪城さん』と『美墨さん』、二人の苦労はまだ続く。
* * *
「じゃあね、バイバイ!」
「またまたまた明日ね!」
ブンブンと元気に手を振って、志穂と莉奈が夕日の中に消えて行く。
いつもは楽しい放課後だけど、今日は何だか疲労困ぱい。
でも二人と別れた事で罰ゲームもとうとうオシマイ。その事にホッとしたように息を吐き顔を見合わせる。
「ようやく終わったね…ほのか」
「そうね…なぎさ」
「ほのか…」
「なぎさ…」
―――ほのかほのかほのか…!
―――なぎさなぎさなぎさ…!
何の意味も無いけれど、そうする事がただ嬉しくて、互いの名前を言い合いっこ。
―――ほのかほのか……アハハ!
―――なぎさなぎさ……ウフフ!
そしてやがて仲良く二人で笑って、フゥと大きく深呼吸して―――
「行こ、ほ・の・か!」
「うん、な・ぎ・さ!」
そうして繋いだ手の感触が、何だかとっても新鮮に感じられる。
ソレはまるで、初めて名前で呼び合ったアノ日みたい。
だから―――
「ねぇほのか?」
「なに?」
「これからも、たまには『雪城サン』て呼んでイイ?」
「もちろん!私もそう思ってたんだモン!」
「なーんだ!ほのかってば♪」
「フフッ!なぎさだって♪」