クリスマス




クリスマスの空はどこまでも灰色で、天気予報は晴れだったはずなのに、
この分だとひょっとしたらひょっとするかも知れない―――


「寒いなぁ…」
ピュウと吹いた風に、庭に飾られたツリーを眺めながら、縁側に座っているなぎさが「フゥ」と手に息を吐きかける。
そしてチラリと隣のほのかの横顔を見ると、少し遠慮気味に話し掛ける。
「ねえ?もうちょっとそっちに行っても…イイ?」
「え?…うん。いいよ」
なぎさの言葉に、ほのかがコクリと小さく頷く。
「ありがと」
お礼を口にして、なぎさがスッとほのかに身を寄せる。
と、その拍子に、二人の指先が軽く触れ合う。
本当に軽く、本当に一瞬。だけどそれはほのかにとっては十分で、なぎさの手を優しく包み込むようにそっと握り締める。
「ほのか…!?」
「なぎさの手、冷たいね…」
驚くなぎさに、ニコッとほのかが優しく微笑む。
「あ…」

キュン―――なぎさの胸の奥で音が鳴る。
握り慣れているはずのその温もりが、何だかとっても新鮮に感じられる。
そして、その手を通じて、優しさが体の中に流れ込んで来る。
「温かい…」
「良かった」
もう一度の優しい微笑み。それがやたらに眩しくて、何故かカァと顔が熱くなる。
だから「…っ!」と慌てて手を離して、急いで視線をツリーへと戻す。
「なぎさ、どうしたの?」
「ううん、何でもないよ!」
不思議そうなほのかに「大丈夫」と笑顔を作る。
でも本当は大丈夫じゃなくて、ずっとキュンキュンしっ放しなんだけど。
―――マイッタな…
手に残った温もりを感じながら、なぎさがそんな自分の心に思わず苦笑する。
が、その時
「ん?」
ふと視界に入って来た白いモノに、その目がキラリと輝いた。
「ほのか、見て!雪、雪だよ!」
「本当だ!やっぱり降ってきたのね!」
はしゃぐなぎさに、ほのかも嬉しそうに答える。
「この分じゃ、きっとホワイトクリスマスね!?」
「うん!そうだね!」
ニッコリと二人で顔を見合わせて、そして仲良く空を見上げる。
雪は段々と強くなり、周囲を静寂の世界へと変えて行く。
やがて互いの吐息以外の音は聞こえ無くなり、そしてそれと同時に、なぎさの胸が再びキュンとし始める。
心臓はありえない位にバクバクと鼓動して、その音がバレるんじゃないかと少し不安になる。
「ねえなぎさ?」
「な、何!?」
そんなこんなの戸惑いの中で不意に呼びかけられ、なぎさが思わず大きな声を出す。
「来年も、それからも、ずっとこうやって一緒に居られたらいいね…」

―――そうか…
何気ない一言だったが、その呟きでなぎさの中で何かが弾けた。
「ほのか…」
自らほのかの手を取ってその瞳を優しくジッと見つめる。ちなみに、もうドキドキは感じない。
「クリスマスプレゼント、あげよっか…」
「プレゼント…?」
キョトンとしたほのかだが、直ぐにハッとした様に首を振る。
「なぎさ、それはダメよ!プレゼントはパーティーの時にみんなで一緒に…」
「違うよ。それじゃなくて―――」
そう言ってクイとほのかを引き寄せる。
額がぶつかりそうな位に近く、逃げ場を失った息が交差する。
何所か遠くから、微かにジングルベルの音が聞こえて来る。
しかし、それ以外はどこまでも静かで、ただシンシンと雪が降っている。
「ダメ?」
「…いいよ」
真っ直ぐな視線に言葉の意味を理解して、ほのかの体からスッと力が抜けて行く。
ゆっくりと近づく二つの唇。そして―――


「…っ」
長い長いキスをして、二人の顔がようやく離れて行く。
少し開かれたままの唇からは、名残惜しそうな吐息がハァと漏れる。
しばらくの間潤んだ瞳で見詰め合う二人。やがて、なぎさがようやく口を開く。
「イキナリでゴメンね…?」
「ううん、そんな事ないよ。凄く嬉しかった」
優しいほのかの答えに、なぎさが安心したようにホッと胸を撫で下ろす。
「ほのか、メリークリスマス」
「メリークリスマス、なぎさ」
フフッと二人が微笑み合う。そして、もう一度キスをした。


・ ・ ・


「おじゃましまーす!」
部屋へと戻った時、玄関の方からお馴染みの声が聞こえて来た。
「みんな来たみたいね!?」
「いこっか!」
その声に、二人が玄関へと歩いて行く。

残念ながらパーティーはツリーの側ではできそうに無いけれど、だけど二人にとっては今年は最高のクリスマス。
だって、最高のプレゼントを交換し合ったんだから。

「みんな、いらっしゃい!」
「メリークリスマス!!」

最高のプレゼントを、ね。








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