大成功
「ねえほのか…話があるの。放課後に体育館の裏まで来てくれる?」
授業の合間の休み時間、なぎさがいつにない険しい表情でほのかに話しかける。
「なぎさ、どうしたの?そんな深刻そうな顔で…」
「……待ってるから」
戸惑うほのかに答えること無く、険しい顔のままなぎさが去って行く。
そして、そんな二人の様子を遠目に伺っていた影が二つ―――
―――見た見た見た?あの雪城さんの表情!
―――うん、見た!これは絶対に面白くなるよ!
* * *
「なぎさ…」
放課後、言われた通りに体育館裏にやってきたほのか。
なぎさを見つけると、不自然に笑顔を作って話しかける。
「話って何?」
「…実はね」
そう言って、なぎさがクイと手招きをする。
すると少し離れた木陰から一つの影が姿を現した。それは―――
「ひかりさん…?」
現れたのは九条ひかり。
そして、ユックリと歩み寄ってきたその小さな肩を、なぎさが優しく抱き寄せる。
「あたし、ひかりと付き合うことにしたの…」
「えっ…!?」
驚きで言葉を失うほのかを余所に、ひかりの肩を抱きながら淡々となぎさが言葉を続ける。
「色々と相談に乗ってるうちに、何だかふと愛おしく感じちゃってさ…。それで気付いたら、もうどうしようも無いくらいに好きになっちゃって…」
「そんな…でも、アカネさんは?アカネさんはこの事…!?」
「アカネさんも知ってます」
縋る様にアカネの名を口にするほのかに、ひかりがピシャリと言い放つ。
「最初は凄く怒られたけど、今では逆に応援してもらってます…」
「あ……」
そして続く言葉に、ほのかが力なくうな垂れる。
無言の三人の間を、ピュウと冷たい風が吹き抜ける。
とその時―――
「はいそこまで!」
志穂と莉菜が明るい声でひょっこりと姿を現した。
「ヤッター!なぎさも九条さんもお疲れサマ!」
「いやー、見事に大成こ……」
「……なぎさ、ホントにひかりさんと付き合うの?」
「チョットチョットチョット雪城さん。だからホラ…」
「ドッキリだってば…」
表情を崩さないほのかに、志穂と莉奈が苦笑いしながら声をかける。
しかしそんな二人の声などは、ほのかにはまるで聞こえていない様子。
「ならばお願い…。せめて、せめて最後に―――」
そして哀しい笑顔でそこまで言うと、その瞳から抑えきれない感情が零れて来た。
「…涙?…ほのか、そんなにもあたしのコトを―――」
その涙に、ハッとした様にほのかを見つめるなぎさ。こちらも涙を浮かべてほのかに駆け寄ると、ギュッと力強く抱きしめる。
「ゴメンね!ほのかがそんなに思っててくれてたなんて、あたし気付かなかった!」
「なぎさ!いいのよ…!」
「ほのか!ずっと離さない!」
「……エーッ!!?どういう事!?」
「まさかまさかまさか…!?」
目の前の光景に唖然とする志穂と莉奈。そして顔を見合わせ
「ありえなーい!!」
「……なーんてね♪」
「フフッ、大成功!」
その声と共に、なぎさとほのかが笑顔でお互いにパッと離れる。
突然の出来事にキョトンとする志穂と莉奈。そんな二人に満面の笑みでなぎさが近寄って行く。
「どう?驚いたでしょ!?逆ドッキリ大成功だね!」
「久保田さんも高清水さんもゴメンね?」
「志穂達から最初にこのドッキリ計画を聞いた時に閃いたんだ!それでほのかに話して協力して貰ったってワケ!ちなみにひかりも全部知ってるよ!」
申し訳なさそうに手を合わせるほのかに続いてなぎさが得意げに説明する。
「…てことは、私たち…!?」
「やられた…しかもなぎさに…!もぅ、悔しいーっ!!」
* * *
「それにしても、さっきのは大成功だったね、ほのか!」
その日の帰り道、夕日を浴びながらなぎさがクスクスと笑い出す。
「そうね。…でもなぎさ?随分と迫真の演技だったけど、まさか本当に…なんてコトは無いわよね?」
「ちょ…!無いよ!あるワケ無いじゃん!」
「そう…?」
「あーっ!?疑ってるでしょ!?」
「ウフフ、ゴメン。冗談よ!」
いつものように仲良くイチャつく二人。
しかしそんな二人を密かに見つめる影が―――
「ヘヘヘ…、あたし達を騙そうなんて10年早いのよ」
「ウンウンウン。…あ、ホラ見て!ちょっとイイ感じ!?」
「あー、ダメだ…。なぎさったら本当にニブイんだから!」
「次はどうする?どうやったら二人が―――」
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