予行演習
「ねえ、なぎさ達はどう思う?」
「はい!?」
とある昼休み、莉奈の突然の一言に、なぎさが目をパチクリさせる。
「一体何のコト?」
「だからだからだから、なぎさと雪城さんだったらどうするかってコト!」
「ほのかとあたしが?…ゴメン、あんま聞いてなかった。ほのか何のコトだか分かる?」
続く志穂の言葉にほのかに助け舟を求めるなぎさ。だがほのかも
「ゴメンなさい。私も良く聞いてなくて…」
と、二人に申し訳なさそうな顔を向ける。
「なぎさだけじゃなくて雪城さんまで!?」
驚く様な呆れる様な顔をする二人。
そして、やれやれといった感じでワケを説明し始めた。
「今ね、もし莉奈とルームメイトになったらって話をしてたの」
「いつかそんな日が来るかもしれないでしょ?それでなぎさ達にも意見を聞こうとしたってワケ」
「で、で、で、なぎさと雪城さんがそうなったらどうする?」
「どうするって、あたしがほのかと…?」
「私がなぎさと…?」
思わず顔を見合わせる二人。
そして腕組みをして考えた―――
(ほのかと一緒に暮らしたらかぁ…)
(なぎさと一緒に住む、ね…)
・
・
・
「ただいま!もうお腹ペコペコ…!」
「うふふ、おかえりなさい!ご飯の支度はもう出来てるわよ」
「マジで!?ありがとう、ほのか!」
「あ、それと、お部屋のお掃除もしといたからね!」
「ええっ、ホントに!?何だか悪いよ…」
「別にいいのよ、だって私達の家だもん!あ、ついでに宿題も私がやろうか?なぎさ、練習で疲れてるでしょ?」
「やったー!!サンキューほのか!!」
―――なーんてコトになるかも!?
「ただいま!もうお腹ペコペコ…!」
「うふふ、おかえりなさい!ご飯の支度はもう出来てるわよ。それとも、まずはお風呂にする?」
「う〜ん…汚れてるし、まずはお風呂にしようかな?」
「ホントに?じゃあその間に洗濯機回しちゃうね?」
「あ、ほのか!?」
「なに?」
「一緒に入らない…?」
―――もぅ、なぎさったらぁ!
・
・
・
「ねえねえねえ、二人共どうしたのかな?」
「さあ?何想像してるんだろ、なんかニヤけてるよね…」
* * *
「誰かと一緒に生活するなんて、なぎさには絶対に無理メポ」
「どう言う意味よ!?」
自身あり気に言い放つメップルに、風呂上りの濡れた髪を乾かす手を休めて、ジロリとなぎさが鋭い視線を向ける。
「まあいいけどね。どうせメップルには縁の無い話だし……それにしても、実際に家族じゃない誰かと一緒に暮らすってどんな感じなんだろう?」
「なら丁度いい機会メポ。この連休中ほのかに来てもらえばいいメポ!」
「え?」
「だってなぎさ以外は旅行に行って誰もいないんだし、ほのかなら心配もないし、いいチャンスメポ。
それにそうしたら、ミップルとずっと一緒に居られるメポ!」
「マッタク、あんたってそればっかりね…」
呆れるように息を吐いて、再び鏡に向かいドライヤーのスイッチを入れるなぎさ。
だがすぐにその手を止めると、ポツリと呟いた。
「でも、電話してみようかな……」
ピッポッパッ―――プルルルル…プルルルル…
「あ、もしもし―――」
* * *
「お早うなぎさ!」
「雪城さんお早う!」
若葉の香りが仄かに漂う朝の通学路。並んで歩く肩を、志穂と莉奈がポンと軽く叩いてくる。
「あっ、おはよ―――」
「お早う、久保田さ―――」
笑顔で挨拶を返そうとする二人。だがそんな事はお構い無しに
「で、一緒に過ごした感想はどうだった?」
「知りたい知りたい知りたい!」
と瞳を輝かせながら、志保達がズイと身を乗り出して来た。
「え?うん、まぁ…アハハ…」
「だから、ねぇ…オホホ…」
「あれ?その様子だとあんまり芳しくは無かったみたいね?」
その曖昧な笑いに意外な表情をする志穂達。そして、なぎさがその笑いの意味を話し始めた。
「実はね―――」
―――ホラなぎさ、休みの日だからっていつまでも寝ないの!
―――ほのか!宿題ぐらい手伝ってくれたって良いジャン!
―――はい掃除機。お部屋のお掃除くらい自分でやらなきゃね?
―――えーっ!?何でこんなに玉ネギが一杯入ってるの!?
―――………!!
―――……
「―――てな具合だったんだ…」
「へー、なぎさと雪城さんでもそんなになっちゃたんだ…」
「やっぱこういうのって難しいのかな?ナンかナンかナンか残念…」
なぎさの話につまらなそうに顔を見合わせる二人。そして何事かを会話しながら先に学校へと歩いて行く。
「でも―――」
しかし、そんな二人の姿が坂の下へと消えた時、なぎさがほのかの方へとニッと笑いながら軽やかに振り返った。
「今回で予習できたし、いつか本当に一緒に住む時は大丈夫だよね!?」
「フフッ、そうね…!」
「さ、あたし達も行こうか!?」
「うん!」
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