初詣
サヨナラ去年、ようこそ今年。
新年とうとう明けましてオメデトウございます。
という訳で、艶やかな晴着に身を包んで、二人は初詣へと神社にやってきたのです。
「もうすぐあたし達の番だね」
「うん。そうね」
参拝の順番待ちの列の中、ようやくと言った感じで声を弾ませるなぎさに、ほのかがニコリと微笑む。
「それにしてもさ…」
そんな微笑みに笑顔を返して、なぎさが改めてほのかを見る。
髪は晴着に合うようにアップに結ってあり、何だかいつもよりも少し大人びて見える。
「やっぱりかわいいなぁ…。その髪型も晴着に凄く似合ってるし」
「そう?フフ、ありがとう。なぎさだって凄くカワイイよ」
「ホントに!?そう言ってくれるのはほのかだけだよ。亮太の奴なんかこの姿見て『アゴにも衣装だね』なんて言っちゃってさ…」
「馬子にも、でしょ」
年が変わってもそれは変わらないのね、と、ほのかがクスクスと肩を揺らす。
「ウフフ、なぎさったらぁ!」
「そうだっけ?アハハ!」
とまあ、そんな感じでイチャイチャしてる間に列はどんどんと進み、二人の順番もいよいよ間近となった。
「ねえ、何お願いするの?」
「え?」
直前のその一言に、ほのかが思わずキョトンとなぎさの顔を見る。
しかしスグに視線を戻すと、軽く首を振ってそれに答える。
「ううん。それはナイショ」
「えー!?ちょっとだけ教えてよ」
「もう。そう言うのは秘密にしなきゃ」
「いいじゃん。あたしも教えるからさ、ね!?」
「ダーメ。それよりもホラ、もう私達の番だよ」
前を見ると確かに誰も居なくて、「残念」となぎさがイタズラっぽく小さく肩をすくめる。
そして、二人で並んで賽銭箱の前に立つと「エイッ」と一緒にお賽銭を投げ入れる。
カランカランと箱の中に落ちる音が聞こえ、それを確認しながら目を閉じ、手を合わす。
―――今年もいい一年になりますように
―――健康でいられますように
―――みんなが笑顔でいられますように
―――リーグで優勝できますように
―――お小遣いUPしますように
―――ん?何かいい匂いが…焼きモロコシだ、食べたぁい
色々なお願い、色々な思いが、二人の心から神様に向かって噴き出して行く。
でもそれは、あまりにも在りきたり過ぎて弱く、届く前に消えて無くなってしまうかも知れない。
だけどね
―――最後にもう一つだけ…
―――どうかこれだけは…
だけど最後に、合わせた手にグッと力を入れて、二人がとっておきのお願いを強く祈る。
力強い、特別なお願いを
―――もう少しだけ、本当にちょっとだけでいいから……
* * *
お参りも終わり、モロコシも食べた。
今日やるべき事は全部終わり、だから賑わいを背にして、ゆっくりと家へと道を戻る。
「あたしお願いしたよ」
と、その途中、突然なぎさが早足にほのかの前に出ると、クルリと振り返ってそう言った。
その視線は本当に真っ直ぐで、スゥと吸い込まれそうですらある。
「叶うかな…?」
「叶うよ、きっと」
内容も聞かずに、ほのかが即答する。
それは聞く必要が無いくらいに分かったから。何故だかは分からないけれど、分かったのだ。
「だよね!…ねえ、アカネさんのお店やってるかな?」
「どうかしら?お正月だし…」
「行ってみようよ!?やってるかも知れないし!」
「え!?でも…!」
「いいから、ホラ!」
驚くほのかの手を、なぎさがキュッと握る。
「やってなかったら?」
「フフッ。その時はその時、それも楽しいって!」
「もぅ、なぎさったら!」
そして二人が、いつもの公園へと再び歩き出す。
今朝よりも、さっきよりも、互いの手の温もりがちょっと温かく感じられる。
本当にちょっとだけ。でも二人にとってはそれで十分なのである。
だってそれが、さっきお願いした事だから。二人をもう少し…って。
ね、カミサマ?
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