弾むココロ(ほのか編)
「あらまあ、ほのかがオメカシなんて珍しいですねぇ」
その桜色の可憐な唇に、ほのかがリップクリームを塗り終えた時、軽い驚きを伴った声が部屋の入り口の方から聞こえて来た。
「おばあちゃま!?」
ビックリして振り向くと、いつもの様に微笑みを湛えながら祖母が立っていた。
「何だか楽しそうですけど、恋人にでも会うんですか?」
「そんな!?ちょっとお出かけするだけよ…」
「あら、そうですか…」
そんなほのかの言葉に合点したのか、軽く頷くおばあちゃま。そして再びほのかに声をかける。
「ところでそろそろ行ってきますけど、お留守番よろしくお願いしますね?」
「え?もうそんな時間?」
少し驚きながら、ほのかがお見送りの為に玄関へと足を運ぶ。
「いってらっしゃい、おばあちゃま!お泊り旅行楽しんできてね!」
「あら、ほのかこそ頑張るんですよ?」
「もぅ、おばあちゃま!?」
何を勘違いしたのか意味深なその言葉に、ほのかが顔を真っ赤にしてうろたえる。
そんな孫娘に「ホホホ…」と笑いながら
「じゃあ、いってきますね」
と日傘を差して、おばあちゃまは出かけていった。
「おばあちゃまったら…」
その姿が見えなくなった時、やれやれと言った感じでほのかが「フゥ」と息をつく。
やがて玄関の扉をガラリと閉めながら
「さてと…」
と小さく呟く。
そしてクルリと振り返ると、どこかウキウキとした感じで―――
「そろそろ私も―――」
* * *
「まだ早かったかな…?」
辺りをグルリと見回しながら、ほのかが時間を確認する。
―――ヤッパリ早かったみたいね…
約束の時間まであと20分。
ちゃんと時間を計算して家を出たはずのに、こんなにも早く着いてしまったのは、きっとずっと早足だったせい。
―――私ったら…
思わず苦笑いしてふと空を見上げるほのか。すると、二羽の鳥がつがいとなって飛んでいた。
「仲良しね…」
そんな様子にクスリと微笑んで、再び待ち人へと思いを馳せる。
笑顔を、声を思い描く度に胸がキュンとなって来る。
会いたい思いが一層高まってくるけれど、待ってる間もウキウキと楽しくて、あっという間に時間が過ぎて行く。
やがて、やや強い春風がピュウと吹く中、そろそろかしら?とほのかが顔を上げたその時
「あ!」
行き交う人々の向こうに、風になびく亜麻色の髪が見えた。
―――ここよ!
抑えきれないトキメキを笑顔に変えて、大きく手を振り自分の居場所を知らせるほのか。
そして駆け寄ってくる眩しい笑顔に、万感の思いを込めて―――
「なぎさ!」
〜おしまい
・
・
・
おまけ
「ゴメンね?遅くなっちゃって…」
「ううん、そんな事ないよ。それよりホラ、汗かいてるよ…」
ハァハァと息を弾ませるなぎさの額に、ほのかがそっとハンカチを当てる。
「今日はずっと一緒にいられるんだから、そんなに慌てなくても良かったのに…」
「だって、早くほのかに会いたかったから。一秒でも早く会いたかったから…」
「…!」
なぎさの言葉に、頬を赤く染めて俯くほのか。
そんなほのかの手をそっと握って
「さ、行こうよ?」
となぎさが微笑みかける。
「……ねぇなぎさ?」
「何、ほのか?」
「今日のお夕飯、なぎさの好きなもの何でも作ってあげるね!」
「ホント!?やったー!ほのか大好き!」
「あら、好物を作るから私のことが大好きなの?」
「え!?そ、そんな事無いよ!そんな事無くても―――」
「フフッ、冗談よ!」
「ちょっとほのか!?からかわないでよ…」
「ウフフ!さて、行きましょ?」
「えーと、まずはドコ行こうか?映画?買い物?それとも甘い物でも食べる!?」
「もぅ…。そうね、まずは―――」
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