飛行機雲






「あ…飛行機雲」

ふと空を見上げた私の目に映る一筋の白い雲。
それは幾度と無く見てきた、極々ありふれた光景。
でも、それであるはずなのに、何故だか私の心に不安と寂しさが押し寄せて来る。
一体どうして?―――ううん、理由は分かってるの。それはきっと、あの日の光景とそっくりだから。

そう、あの

―――…ヒック…どうして?…どうして行っちゃたの?

幼い日の

―――おとうさんおかあさん…

悲しい日と…


あの日、飛行場から見上げた空も今日と同じように青空で、そして同じように飛行機雲が浮かんでいた。

おばあちゃまは、お父さんとお母さんはお仕事なんだよって教えてくれたけど、
当時の私にはそれは永遠の別れのようで、ずっと泣いていたっけ…

大好きな人と離れ離れになる辛さ。その象徴の一片が、あの日のあの空。

だから―――



「ほのか、どうしたの?」

「なぎさ…!」
「ぼんやりと空なんか眺めちゃって…」
ハッと振り返るほのかに、なぎさが優しく微笑みを向ける。

「ちょっと…思い出してたの」
「思い出すって、何を?」
「それは…何でも無いよ」
静かに首を振るほのか。そして
「ねえなぎさ?」
と逆に問いかける。

「うん?」
「なぎさは…なぎさはずっと一緒にいてくれる?」
唐突に思えるほのかの質問。けれどなぎさは間を置かずに力強く答える。
「モチロンだよ!それに、例え離れ離れになったって心はいつでも―――」
「ダメよ!!」
しかし、そのなぎさの言葉をかき消すようにほのかが声を上げる。そして
「離れちゃダメなの…心だけじゃダメ、ずっと側にいてくれなきゃダメなの…」
と今度は俯いて、消え入りそうな声で小さく呟く。
だがそんなほのかを、なぎさが包み込むようにそっと抱きしめた。

「どこにも行かないよ…。ずっとほのかの側にいる。どんな事があっても絶対に…」
「……約束してくれる?」
「うん、約束する。忠太郎も聞いてたよね!?あたしの約束」
「ワン!」
「だってさ」
「…ありがとう」


もう一度空を見上げると、そこにはさっきよりも長く伸びた飛行機雲。
でも、もう嫌な気持ちは微塵も感じない。
だって私にはなぎさがいるもの!

「ほのか、また空見てる!一体どうしたの?」
「フフ…秘密!」
「え〜!?ズルイなぁ…何が見えるのか教えてよ!?」
「だーめ!ウフフッ!」








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