ここにいるよ




私は……誰?

―――私はひかり…九条ひかり

私は……何?

―――私は中学生。ベローネ学院の生徒。そしてアカネさんの従妹…

本当に?本当にそれだけ?

―――…ある人達は、私は光の園のクイーンの命だと…

じゃあ本当はなんなの?何故ここにいるの?

―――それは……私は……



……ちゃん

…嬢ちゃん

「お嬢ちゃん!」

その声に、ハッとひかりが顔を上げる。

「どうしたんだい、ボーッとしちゃって?ハイお釣りだよ」
「ありがとう御座います…」

怪訝そうな主人にお辞儀をして、少し慌ててお店を後にする。


―――私はひかり…九条ひかり…。でもそれも…



* * *



「ひかり…どうしたの?最近元気ないじゃない…」

タコカフェの車内で一人物思いに耽るひかりに、アカネが心配そうに声をかける。

「アカネさん…」
何でもないんです、大丈夫です―――無理に笑顔を作ってひかりが答える。

「でも…」
「本当に何でもないんです!」
叫ぶ様に言うと、逃げるかの如く外へと足を向ける。
だが―――

「ひかり、歌うたってあげるね!」

―――降出した雨の中ぁ〜 駆け込んできたねぇ
「アカネさん!?」
突然な出来事に目を丸くするひかり。


―――どんな時も 何があってもぉ〜
「…フフフッ!」
その調子外れな歌声に、自然と微笑みが零れてくる。


―――いっつもわたしは…
「……」
やがていつしか微笑みは消え、目を閉じて全身で歌を受け止める。


―――目印になる ここにいるよぉ〜…
そしてラストを迎えた時、ひかりの頬を一筋の雫が流れ落ちて行く。


「良い歌でしょ…?」

そんなひかりの頭に手を置いてアカネが優しく語りかける。

「あたしはいつもココに居るから…。だから何を悩んでるか知らないけど、ココに居る時はもっと笑顔でいなきゃ?
だって、ココはあたしとひかりの夢のお城なんだから!」
「アカネ…さん…」
「ちょっと、泣くこたぁ無いじゃない!?何もお別れ言ってるワケじゃ無いんだし!」
「はい…」
「それよりホラ、あっちから来るのなぎさ達じゃないの?笑顔でお出迎えしてあげな!」
「…ハイ!」

涙を拭いて、笑顔でひかりがなぎさ達の下へと走って行く。
そんなひかりを優しく見つめて、アカネがホッとしたように呟く。

「…元気になったみたいだね。それにしても、ココに居るよ…か。
エヘヘ、まさか学生の時にお遊びで作った歌が役に立つとはね…。
でもどんな事があっても、あたしはココでずっと待ってるからね、ひかり」


―――私はひかり、九条ひかり。たとえこの先どうなろうとも、私はずっと「ひかり」でいます。
    だって私には帰るべき場所があるから、待ってくれている人がいるから。
    だから……


「いらっしゃいませ!」








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