『なぎさ』と『ほのか』





「はい、じゃあ73ページを開いて…」
教室に響くよし美先生の声。
続いて聞こえてくるは、一斉にぺラぺラとページをめくる音。
モチロンなぎさもほのかも皆と一緒にペラペラペラ…。

「今日は俳句について勉強します。まずは皆さんご存知の松尾――」
ペラペラが終わり、教科書片手に授業を再開するよし美先生。
しかしそんな言葉などどこ吹く風。なぎさの興味は最早次のページへと移っている。

(誰このオジサン?高浜虚子…きょこ?女の人みたいな名前付けられてカワイソウ…)

などと情けないコトを考えながら何気なくページを眺めていたなぎさ。
しかし突然その目が一つの句に吸い寄せられる。

―――白牡丹と いふといへども 紅ほのか

『ほのか』…その文字になぎさが目を輝かす。

あはっ、ほのかだって!
この句の意味はよく分からないケド、きっとイイ句だよ。
ウン、間違いない!だって『ほのか』って入ってるんだもん!
『ほのか』か…ほのか、今何考えてるのかな?
あたしと違って真面目に授業のコト思ってるんだろうな…。
でもひょっとしたらあたしのコト考えてたりして!?…なんちって。
マサカね…。

―――ちらっ

・ ・ ・

「今日は俳句について勉強します。まずは皆さんご存知の松尾――」
ペラペラが終わり、教科書片手に授業を再開するよし美先生。
しかしほのかは、次は何が紹介されてるのかしら?と、知的好奇心から次のページにも目を通す。

(フーン…こっちのページは高浜虚子ね)

などと頷きつつ教科書を読んでいたほのか。
だが突然その目が一つの句に吸い寄せられる。

―――なぎさなる 白波見えて 良夜かな

『なぎさ』…その文字にほのかが胸をトキメかす。

ふふっ、なぎさだって!
初めて見た句だけど、何だか凄い良い句ね!
きっと『なぎさ』って入っているおかげね。
『なぎさ』か…なぎさ、今何考えてるのかな?
勉強の事じゃないのは確かだろうから、お弁当の事かしら…?
でももしかして私の事考えてたりして!?
まさかね…。

―――ちらっ


「!!」
「!?」

不意に重なる二人の視線。
急に熱が出たようにカラダがポッと熱くなる。
慌てて視線を戻そうとするも絡み合ったまま離れない。
そしてジッと見つ合ううちに、なんだか互いのキモチが伝わって来るような気がしてくる。

―――なぎさ…私…
―――ほのか…あたし…

瞳と瞳、ココロとココロで二人が会話をしようとしたその時

「美墨サン、雪城サン!」
よし美先生のお怒りの声が二人の世界をぶち壊す。
「あなた達、いくら仲がイイからって授業中に見つめ合わないの!」
その言葉で顔が急に熱くなる。
「あの、その、ほのかが教科書に載ってて…イヤ、きょこって人がほのかを使って…!?」
「そうなんです!なぎさが虚子に使われてて、だから…」
「そう…良く分からないけど、もう分かったからちゃんと授業を聞いててね?」

よく分からない二人の言い訳によく分からないよし美先生の答え。
何だかよく分からないまま、何事も無かったかのように再び授業が再開される。

けれど、二人にはよく分かった事がある様子。
でもそれは二人だけのナイショ。









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