お味噌汁





「ほのかさん、昨日のお誕生日はどうでした?」
「とっても楽しかったわ!お父さんやお母さんと一緒に過ごせたし、プレゼントも沢山貰えたし!」
「いいな〜。ねっほのか、どんなプレゼント貰ったの?教えてよ!?」

タコ焼きをパクつきながら、昨日のほのかの誕生日の話題で楽しく盛り上がる三人。
すると、そんな話をひかりの側で聞いていたひかるが、興味津々と言った感じでほのかに聞いてきた。

「へぇー、ほのかお姉ちゃんたんじょうびだったんだ!いくつになったの?」
「16歳になったのよ。ひかる君よりも大分お姉ちゃんでしょ?」
ひかるの頭を優しく撫でながら、ほのかがニッコリと答える。
とその時
「16歳って言えば―――」
タコカフェの奥から、アカネが追加のタコ焼きを持ってテーブルへと近付いてきた。

「結婚出来る年なんだよね。まぁほのかには関係の無い話だろうけど…」
容器を机に置き、ポンと肩を軽く叩いてアカネがほのかに笑みを向ける。
「当たり前です!」
笑顔で返すほのかの言葉に、一同から笑いが沸き起こる。
しかしそんな笑いの中、ひかるがほのかとなぎさの顔を見比べながら楽しそうに声を上げた。
「ふーん、そうなんだ…。じゃあ、なぎさお姉ちゃんも16さいになったら、ふたりでケッコンできるね!」

「―――!!」
「―――!?」
ひかるの無邪気な一言に、二人の動きが一瞬止まる。

「ひかる君たら何言い出すの!?私達は女の子同士で―――」
「いやいや、あんた達なら分からないよ!?」
顔を赤くしながらひかるに諭そうとするほのかだったが、冷やかすようにアカネが茶茶を入れる。
「あかねさん!?」
耳まで赤く染めながらアカネへと振り返るほのか。そんなほのかに
「アハハッ!冗談だよ、冗談!!…さてと仕事に戻るかな〜」
とカラカラと笑いながら、アカネがキッチンへと戻っていった。

「もぅあかねさんってば…。ねぇほのか?」
「うん…」


―――



* * *



―――グツグツグツ…

火にくべた鍋の横で、手の平に乗せた豆腐を、ほのかが手際良くスッと小さく切っている。
そしてそれを鍋に入れると、入れ替わりに中身をおたまで掬ってすっと味見をする。

「…うん、美味しい!」
その味に満足そうに頷くほのか。
とその時、ガチャリとドアが開いて「ただいまー!」となぎさが部屋に戻って来た。

「あっなぎさ!お帰りなさい!」
「はぁ、疲れた。今日もラクロスの練習ハードだったぁ…」
倒れるようにソファーに座り込むなぎさに
「フフッ、ご苦労様…」
とほのかが優しい笑みで声をかける。
「ありがとう!…ところで良い匂いがするね!?これって―――」
「うん!温かいお味噌汁!」
「やっぱり!ほのかのお味噌汁大好き!」
満面の笑顔で喜ぶなぎさ。
だが次の瞬間、ふと真剣な表情になると、愛しそうに視線を向けてほのかに呟いた。
「だって、ほのかの愛情が一杯詰まってるんだもん…」
「なぎさ…!」
「だから、ほのかの作った物なら何だって美味しいよ…」
そしてその言葉と共に立ち上がると、ほのかへと静かに歩み寄る。

「ほのか、大好きだよ…」
「えっ…?」
「その桜色の可憐な唇も、あたしをいつも見守っていてくれるその優しい瞳も、心が温かくなる様なその笑顔も―――」
「あ…」
「全部大好き…」
そう言って、ほのかの肩になぎさがそっと手を乗せる。
「なぎさ…私も大好き…」
静かに目を閉じるほのか。

そして二人の唇が触れ合―――



「―――!?……夢?」



* * *



「お、お早う…」
「なぎさ…お早う…」
待ち合わせ場所でどこかギクシャクとした挨拶を交わす二人。
何だか気まずい雰囲気で、どちらからも続く言葉が出てこない。
だが、そんな状況をどうにかしようと、無理に笑顔を作ってなぎさがほのかに話しかけた。

「どうしたの?何だかいつものほのかと様子が違うけど…」
「なぎさこそ…。私は別になんでもないよ。ただ、ちょっと変な夢見ちゃって…」
苦笑いするほのかだがその言葉に、なぎさが驚いたように声を上げた。
「ほのかも!?実はあたしも夢見ちゃって、それで…」
「えっ…!?」
思わず顔を見合わせる二人。そして、再び沈黙がやってくる。
だがやがて
「ねぇほのか…」
と、空を見上げながら、なぎさがポツリと呟いた。

「何?なぎさ…」
「お味噌汁飲みたいな…。ほのかの作る温かいお味噌汁が…」
「―――!!……うん、いいよ」








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