しろいこいびと
「遅いな…」
陽も西に沈もうとする夕暮れ時、時計台をチラリと見上げながらなぎさが一人で待ちぼうけ。
ぼんやりと周囲を見渡すと、目に入るのはそこかしこで身を寄せ合いながら歩くカップル達の仲睦まじい姿。
―――ハァ…早く来ないかな…
「それにしても…」
―――ピュウゥゥッ!
「うー寒い!マフラーしてくれば良かった。昼間は結構暖かかったんだけど…」
吹きすさぶ寒風にブルッと身を震わせながら、少しでも体を温めようと小刻みに足踏みを繰り返す。
そんな時ようやく―――
「お待たせ!」
待ちに待ったその声に、なぎさがちょっと拗ねた様に――しかしどこか笑顔で――視線を向ける。
「もぅ遅いよ!待ちくたびれちゃった…」
「ゴメンね!?洗濯物取り込んでたり、忠太郎のお散歩に行ってたりしたら遅くなっちゃった…」
「いいよ!その代わりに今日はうーんと付き合ってもらうんだから!」
「フフッ、覚悟してマス!」
大げさに手で円を描いて「うーんと」を強調するなぎさに、ほのかが楽しそうに笑顔を零す。
とその時再び―――ピュウゥゥッ!
「うひゃ!」
「なぎさ、寒いの?私のマフラー使う?」
冷たさに思わず悲鳴を上げるなぎさに、心配そうに声をかけるほのか。
「え?いいよ。だってそうしたらほのかが寒いでしょ?」
「でも、なぎさはずっと待ってたんだし…」
そう言いながらマフラーを外し、そっとなぎさに手渡す。
手渡されたマフラーをジッと見つめていたなぎさ。だがやがて、何事かを閃いたのかパッと顔を上げた。
「じゃあ、こうしよう!?」
そしてその言葉と共にマフラーの片方をほのかの首へ、そしてもう片方を自分の首へ―――
「コレで解決!」
「なぎさぁ…なんか恥ずかしいよ…」
「でも、これならお互いに暖かいでしょ!?」
恥かしそうに俯くほのかにニッコリとなぎさが笑顔で答える。
だがその時、鼻の頭に冷たいモノがチロリ…
「…雪?ウン雪だ!ほのか、雪だよ!」
「本当!それにしても嬉しそうね、なぎさ」
「うん!だって雪が降ると雪合戦とかカマクラとか作れるでしょ!?それに―――」
一旦言葉を止め、開いた手の平に雪が舞い落ちて来るのを待つ。
そしてそれを確認すると再び口を開く。
「それに、ほのかみたいだしね!」
「私みたい…?」
「だってホラ、『雪しろ』ほのか…でしょ!?」
「もぅなぎさったらぁ!笑わせないでよ!」
だんだん強く降ってくる雪の中、なぎさとほのかがアハハと笑いあう。
そんな二人に街行く人々も不思議そうな、けれどどこか温かな視線を送りながら通り過ぎて行く。
一つのマフラーで包まれる二人。体だけでなく心も底の方からポカポカになって来る。
「行こうか!?」
「行きましょ!」
やがて笑顔を交わして、降りしきる雪の中、一歩を踏み出して行く。
この分だと明日はきっと一面の銀世界。
そんな素敵な朝を、二人はどこで迎えるのかな?
自分の部屋で一人で?家族と一緒?それとも………一緒に?
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