たなばた
満天の星々が七夕の夜空に美しく瞬いている。
その輝きの下
「これでよし…と」
ワゴンの脇に立てかけた笹に短冊をキュッと結んで、アカネが満足そうにパンパンと手をはたく。
「ひかるのお願いきっと叶うよ。ただし、おりこうサンにしてたらね!」
「ほんとう!?ぼくイイコにしてるよ!」
「お、言ったね?約束だよ!?」
「うん!」
「よーし!」
「フフ…」
そんな二人のやりとりをニコニコして聞いていたひかり。
やがて自分の短冊に願いを書き終えると、それをそっと握りながら空へと視線を移す。
「それにしても綺麗…。ほのかさん、あそこに見えるのが織姫と彦星ですよね?」
「そうよ。でもこんなにハッキリと見えるなんて…!」
満足気に答えるほのか。だがそんなほのかに
「おりひめとひこぼしって…?」
と、ひかるが不思議そうに問いかけて来た。
「え?ひかる知らなかったんだ…。ちょっとなぎさ、あんた教えてやりなよ?」
「あ、あたしが!?そういうのはほのかの方が…」
アカネの呼びかけに、「助けて…」とばかりになぎさがほのかをチラリと見る。
「もぅなぎさったら…」
そんななぎさに思わず苦笑いするほのかだが、スグにひかるへと向き直り
「そうね…」
と、夜空に一際輝く二つの星を指差す。
「あそこに他の星よりも光ってる星が二つ見えるでしょ?あれが織姫であっちが彦星よ。あの二つの星には物語があってね―――」
・ ・ ・
「―――これが七夕に伝わる物語よ」
「ふーん、そうなんだ…」
ほのかの話を聞き終え、小さく頷いてひかるが改めて星空を見上げる。
「そう言う特別な夜だから、短冊に願いを書けばそれが叶うって言われてるんだよ。ひかる分かった?」
そう言いながら、アカネがひかるの頭をそっと撫でる。そして
「それはそうと、なぎさは何をお願いしたの?」
と、なぎさへと振り返る。
「え!?あ…それはその…まだ秘密です!」
サッと短冊を背中に隠しながら、どこか恥ずかしそうになぎさが答える。
「なによそれ!?…じゃあほのかは?」
「私もその…」
「ほのかまで!マッタク二人ともケチだね…ひかりはどう?」
二人の答えに呆れたように声を出して、アカネがひかりへと顔を向ける。
「私ですか…?」
一瞬キョトンとした表情を浮かべたひかり。だが、自らの短冊をそっと胸に押し当てると、瞳を閉じて優しく願いを口にした。
「みんなとずっと笑顔で一緒に居られますようにって…そうお願いしました」
「ひかり、あんた良い事言うねぇ…ん?どうしたの二人とも、そんな驚いたような顔しちゃって…?」
「ひかりさん…私も同じ事お願いした!」
「あたしもだよ、ひかり!」
「なぎささん、ほのかさん!」
互いに短冊を見せ合う三人。タコカフェ全体が感動的な空気に包まれて行く。
「ふーん、そう言う事か…まぁでも、三人がお願いしたんだ、きっと神様が叶えてくれるよ」
「ハイ!そう思います!…ところで、アカネさんは何を短冊に書いたんですか?」
「アタシ?そりゃアタシのは決まってるじゃん!」
「何です?」
「もっとたこ焼きが売れますように、もっとお客さんが来ますように、もっと―――」
「また随分と現実的なお願いね…」
「さすが商売人、恐るべし…」
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