勇気でチョコっと
「……っ」
声をかけようとして、思わず言葉を飲み込んだ。
夕日を浴びてキラメクその横顔に、胸がドキドキと高鳴って、身体がカッと熱くなる。
そんな胸の内を気付かれないように、そっと茜色の空を見上げて深呼吸。
―――ふぅ、落ち着いて…ってアレ?コレって何だか…
何だかデジャビュ。いつかどこかで経験したようなこの光景。
不思議に思う頭に、一年前の今日という日が鮮やかに蘇ってくる。
―――そう言えば、去年は渡せなかったんだよね
事前に色々リサーチして、好きな味も好きな形だってちゃんと調べたのに
精一杯に心を込めて手作りしたのに、結局自分で食べる羽目になっちゃって…
ハァ…あたしってばホントに意気地無し…
肩を落とし、心の中でため息をついて、過去の自分にダメを出す。
だけどそれも一瞬。スグに視線を上げて
―――でも今年は絶対大丈夫
と、落ち行く夕日に決意を誓う。
―――だって、一年前のあたしじゃないもん
この一年で勇気を手に入れたんだから!
だからホラ、さぁなぎさ!
ドキドキを静める様にフーと息を吐いて、ギュッと手に力を込める。そして―――
「…ほのか!」
「ほのかコレ…」
かすれそうな小さな声で、なぎさが手にした包みをスッとほのかに差し出す。
「これって…チョコレート?」
「うん…あの…友チョコだけどね」
始めはキョトンとしていたほのかだが、そんななぎさの言葉に
「ありがとう、なぎさ!」
と、パッと笑顔になる。
そして繊細なガラス細工を扱うようにそっと受け取ると、入れ替わりに鞄から何かを取り出して―――
「ハイなぎさ、私からも!」
「え?ほのか、マサカ…」
「ウフフ、チョコレート!」
驚くなぎさに少し顔を赤らめながらほのかが言葉を続ける。
「私のだって友チョコだからね?」
「ううん!ありがとう!」
飛び切り笑顔で感謝を言って、なぎさが友チョコと呼ぶには少しばかり立派なソレを受け取る。
「すっごく嬉しいよ!」
「フフッ、私だって!」
そして互いにしっかりと胸に抱きながら、再び二人が並んで歩き出す。
幸せ一杯夢一杯な帰り道。
だけどいつの間にかハッキリと姿を現した月を見て、なぎさがふと大事な事を思い出した。
―――アレ?結局今年も渡せただけだったような気が…
―――でもまぁいいかな?だって去年より一歩前進だもんね!?
去年より今年、今年より来年。そうやって一歩一歩進んで行けばいいんだよね!?
だから来年は絶対に気持ちを伝えられる、絶対に!
ウン、ありったけの笑顔で!
「ところで、ねぇほのか?」
「なーに、なぎさ?」
「これなんだけど、チョコっとだけココで食べてもイイ?」
「ダーメ!お家に帰ってからね」
![]()
TOPへ