指輪物語
―――あなたは神の教えに従い……死が二人を分かつまで……誓約しますか?
「はい…誓います…」
純白のドレスに身を包み、少し俯きながらほのかが誓いの言葉を口にする。
今日のほのかはいつにも増して綺麗で、女のあたしでも心を奪われてしまいそうな程。
―――今まで二人で一緒に色々なことやったよね?
出会ってから今日までの思い出が、走馬灯のように頭を駆け巡る。
―――でも、そんな機会もこれからは少なくなっちゃうね…
そしてそれと共に、若干の寂しさも押し寄せる。
モチロンそんなあたしの感情など何の影響も無く、式は順調に進んでいく。
誓いの言葉、指輪の交換。そして次は―――キス。
新しい物語の始まりを告げる、永遠なる愛の誓い。
だけどそれは同時に、今までの物語の分かれ道…
―――それでは誓いのキスを…
神父の言葉に、新郎がほのかのベールをそっとめくる。
そこに表れたのは、少しはにかみながらも凄く幸せそうな顔。
そして、二人の唇が優しく触れ合った。
互いの愛が伝わって来るようなキスに、出席者から祝福の拍手が沸き起こる。
もちろんあたしだって負けてはいられない。両手にグッと力を込める。
だけどその瞬間、あたしの頬を一筋の熱いモノが流れ落ちた。
喜びとは別の、もっと複雑な雫―――
・ ・ ・
最後の賛美歌も終わり、式の終了の時がやってきた。
幸せ一杯な笑顔で退場する二人。やがてあたしの横へと差し掛かる。
「ほのか…!」
お祝いを言おうと、ほのかを呼び止める。だけど―――
「………」
だけど、続く言葉が出てこない。ただ口がパクパクと空しく動くだけ。
そんなあたしに少し不思議そうな顔をしたほのかだけど、
スグに笑顔に戻り再び歩き出す。
「ホラホラホラ、なぎさどうしたの?」
「なぎさ、お祝いの言葉だよ!?」
―――分かってるよ…
「なぎさ、雪城さん行っちゃうよ!?」
「なぎさ早く!」
―――でも言えないの…!
「なぎさ!?」
「なぎさ!」
―――もう!ほっといて!
なぎさ!!
……さ
…ぎさ
なぎさ!
「どうしたの?なぎさ…」
目を開けると心配そうなほのかの顔。
「ほのか……夢?」
「涙流してるけど大丈夫?」
夢だった事にどこかホッとしながら頬を触ると、確かに冷たいモノが感じられた。
「…結婚式の夢見てたんだ」
「結婚式?」
「ほのかがね、誰か知らない男の人と結婚しちゃうの…」
「私が知らない男の人と結婚を…?」
「うん…。それで誓いのキスを見た瞬間、ほのかがどこか遠くに行っちゃう様な気がして、
このままお別れなんじゃないかとか思っちゃって、それで……」
再び泣き出しそうなあたしの頬に手を添えて、ほのかが優しい微笑みを向ける。
「そんな事ある訳無いじゃない…。だって、ホラ…」
かざした左手に輝く一つの指輪。
「お揃いでしょ?なぎさと…」
そう、あたしの指にもほのかと同じ指輪が輝いている。
それはあの日誓い合った二人の永遠の愛の証。
「ねえほのか…どこにも行かないよね?」
「大丈夫、なぎさを一人になんて絶対にしないから」
「ほのか…」
大好き―――そう呟いてほのかにキスをした。
幾度と無く繰り返して来た行為だけど、新たな愛が生まれて来る。
このままずっとこうして居たいな…そう思った矢先
―――グゥ〜
「エヘヘ…なんか安心したらお腹が空いてきちゃった…。どっか食べに行こうよ!」
「もぅ、なぎさったら!いくつになっても子供みたいなんだから…!」
「そうだ!アカネさんのお店、とうとう完成したって言ってたから行ってみない!?」
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